
新しい商材を扱いはじめると、自社でチラシやLP、比較資料をつくる場面が増えてきます。「他社より安い」「業界No.1」「導入で経費が半分に」——そんな一文を、深く考えずに書いてしまった経験はないでしょうか。
実はこうした表現の一つひとつに、法律上のルールがあります。それを定めているのが景品表示法(景表法)です。しかも、規制の対象になるのは商材をつくったメーカーだけではありません。その商材を売るために自分で資料や広告をつくった代理店・営業代行も、「表示をした事業者」として責任を問われる可能性があります。
とはいえ、法律の条文をそのまま読んでも、自社の営業のどこが対象なのかは見えてきません。この記事では、景表法の基本と2023年・2024年の改正で加わったルールを整理したうえで、代理店・営業代行が現場で使えるチェックポイントまで、できるだけかみくだいて解説します。
<目次>
- 景品表示法(景表法)とは?広告表現のルールを定めた法律の基本
- なぜ代理店・営業代行こそ景表法を知っておくべきなのか
- 不当表示の3つの類型|優良誤認・有利誤認・告示で指定された表示
- ステマ規制とは?広告であることを隠せなくなったルール
- 景品規制とは?キャンペーンや特典を企画する前に知っておきたい上限額
- 違反するとどうなる?措置命令・課徴金と2024年10月改正のポイント
- 代理店・営業代行が違反しないための7つのチェックポイント
- まとめ|表現のルールを知ることが、安心して売り続ける土台になる
景品表示法(景表法)とは?広告表現のルールを定めた法律の基本
景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)は、消費者庁が所管する法律で、一般消費者が商品やサービスを選ぶときに、誤解によって不利益をこうむらないようにするためのルールです。略して「景表法」と呼ばれます。
規制の柱は、大きく2つに分かれます。
- 表示規制:実際よりも良く見せる、あるいは実際よりも得に見せる表示を禁止する
- 景品規制:おまけや懸賞などの景品類の金額に上限を設ける
ポイントは、対象が「一般消費者に対する表示・景品」だという点です。純粋な企業間取引だけで完結する商材であれば直接の対象にはなりにくい一方、最終的に個人のお客様へ届く商材や、個人事業主も含めて広く募集するサービスでは、しっかり意識する必要があります。
また、景表法には「わざとではなかった」という言い訳が通用しにくいという特徴があります。だますつもりがなくても、書いた内容を裏づける根拠がなければ違反と判断されうる。ここが、多くの企業がつまずくところではないでしょうか。
なぜ代理店・営業代行こそ景表法を知っておくべきなのか
「うちは仕入れて売っているだけだから、表現の責任はメーカー側にある」——そう考えたくなる気持ちはよく分かります。しかし実務では、そう言い切れない場面が少なくありません。
景表法で責任を負うのは、その表示を行った事業者です。つまり、次のようなケースでは代理店側が当事者になります。
- 自社でLP・チラシ・比較表・提案書をつくって配布している
- 本部から受け取った資料に、自社で数字やキャッチコピーを追記している
- 自社のSNSやブログで、商材の効果を独自の言葉で紹介している
- 自社サイトに「導入で○%削減」といった実績を掲載している
とくに注意したいのが、商談で好感触を得るために、つい強い言葉を足してしまうケースです。本部の資料には「削減できる場合があります」と書かれているのに、自社資料では「必ず削減できます」と言い切ってしまう。この一手間が、後々のトラブルにつながります。
逆に言えば、表現のルールを理解している会社は、無理をしなくても信頼される提案ができるということでもあります。
不当表示の3つの類型|優良誤認・有利誤認・告示で指定された表示
景表法が禁止する「不当表示」は、次の3つに整理されています。
①優良誤認表示(品質・性能を実際より良く見せる表示)
- 根拠がないのに「業界No.1」「他社製品より高性能」と書く
- 効果に個人差があるのに、あたかも全員に効果があるように書く
- 一部の条件でしか成立しない試験結果を、一般的な性能のように示す
優良誤認が疑われた場合、行政から表示の裏づけとなる合理的な根拠資料の提出を求められることがあります。期限内に出せなければ、不当表示と判断されうる点は覚えておきたいところです。
②有利誤認表示(価格・取引条件を実際より得に見せる表示)
- 実際には販売していない価格を「通常価格」として並べる二重価格表示
- 「今だけ」と書きながら、実際は常時同じ条件で販売している
- 別途費用がかかるのに、それを目立たない場所にしか書かない
③その他、誤認されるおそれがあるとして告示で指定された表示
無果汁飲料や原産国、おとり広告、有料老人ホームなどに関する個別の指定に加え、後述するステルスマーケティングもこの類型に含まれます。
ステマ規制とは?広告であることを隠せなくなったルール
2023年10月1日から、いわゆるステルスマーケティング(ステマ)が景表法上の不当表示として指定されました。事業者の広告であるにもかかわらず、一般消費者がそれを広告だと判別しにくい表示が対象です。
代理店ビジネスの現場でも、次のような場面は決して他人事ではありません。
- 報酬や商品提供を受けたインフルエンサーに、その旨を伏せて紹介してもらう
- 自社スタッフが第三者を装って口コミやレビューを投稿する
- アフィリエイターに広告表記のない紹介記事を書いてもらう
対応そのものは難しくありません。「広告」「PR」「〇〇社から商品提供を受けています」といった表記を、消費者がすぐ気づく場所に明確に入れる。これだけです。文末に小さく添えたり、大量のハッシュタグに紛れ込ませたりすると、明瞭とは言えないと判断される可能性があります。
なお、この規制で責任を負うのは、あくまで表示をさせた事業者側です。「投稿してもらったから相手の問題」とはならない点に注意してください。
景品規制とは?キャンペーンや特典を企画する前に知っておきたい上限額
販促のために「ご成約でギフト券プレゼント」「抽選で家電が当たる」といったキャンペーンを打つこともあるかと思います。一般消費者向けにこうした景品を出す場合、金額には上限があります。
- 総付景品(申込者・購入者全員に渡すもの):取引価額1,000円未満なら200円、1,000円以上なら取引価額の10分の2まで
- 一般懸賞(抽選など):取引価額5,000円未満なら取引価額の20倍、5,000円以上なら10万円まで。総額は懸賞に係る売上予定総額の2%まで
- 共同懸賞(商店街など複数事業者による実施):上限30万円、総額は売上予定総額の3%まで
「思い切った特典で差をつけたい」という発想は自然ですが、上限を超えた瞬間に、販促そのものが違反になってしまいます。企画段階でひと呼吸おいて確認しておきたいところです。
違反するとどうなる?措置命令・課徴金と2024年10月改正のポイント
違反が認められた場合、まず行政から措置命令が出されます。表示の差し止めや再発防止策、消費者への周知などが求められ、事業者名とともに公表されるため、信用面のダメージは小さくありません。
さらに、優良誤認・有利誤認については課徴金納付命令の対象となり、対象期間の売上額の3%が課されます。
そして2024年10月1日に施行された改正では、次の点が加わりました。
- 確約手続の導入:違反の疑いがある事業者が自主的な是正措置計画を申請し、認定を受ければ、措置命令・課徴金納付命令の適用を受けない仕組み
- 直罰規定の新設:優良誤認表示・有利誤認表示に対し、100万円以下の罰金が直接科されうる
- 課徴金の見直し:過去10年以内に課徴金納付命令を受けている場合は1.5倍(4.5%)に。売上額を正確に把握できない場合の推計も可能に
全体として、自主的に直す道を用意する一方、繰り返す事業者には厳しくなった、という方向性です。
代理店・営業代行が違反しないための7つのチェックポイント
難しく考えすぎる必要はありません。日々の営業では、次の7点を押さえておけば大きく外すことはないはずです。
- ①最上級表現には根拠資料をセットにする:「No.1」「最安」「日本初」は、調査主体・時点・範囲まで示せるかを確認する
- ②効果の表現は事実の範囲にとどめる:「必ず」「絶対」ではなく、条件と実績の幅を正直に伝える
- ③価格表示は実態と一致させる:比較対象の価格が実際に販売されていたものかを確かめる
- ④条件・除外事項は同じ画面・同じ紙面で伝える:注記が届かなければ、書いていないのと同じと見なされうる
- ⑤本部資料の表現を勝手に強めない:追記したい場合は本部に確認し、記録を残す
- ⑥紹介・口コミ施策では広告表記を明確に:関係性がある投稿には必ずPR表記を入れてもらう
- ⑦キャンペーンは企画段階で上限を計算する:取引価額を基準に、総付・懸賞の区分ごとに確認する
加えて、社内で「この表現は使ってよい/使わない」を一覧にしておくと、担当者が変わっても品質が保たれます。営業トークスクリプトや提案書のテンプレートに落とし込んでおけば、チェックの手間そのものが減っていきます。
なお、判断に迷う表現や、扱う商材が個別の業法(医薬品、食品、金融など)にも関わる場合は、本部や専門家に確認するのが確実です。本記事は一般的な解説であり、個別の判断を保証するものではありません。最新の内容は消費者庁の公表資料もあわせてご確認ください。
まとめ|表現のルールを知ることが、安心して売り続ける土台になる
景表法というと「守らないと罰せられる面倒な決まり」と受け取られがちですが、見方を変えれば、正直に売っている会社が正当に評価されるためのルールでもあります。
誇張された表現があふれる市場では、まじめな提案ほど埋もれてしまいます。逆に、根拠を示せる数字と、条件まで含めて誠実に伝える姿勢は、それ自体が他社との差別化になります。実際、長く伸び続けている代理店ほど、この部分を丁寧に扱っている印象があります。
今日からできることは、そう多くありません。自社の資料やLPを一度見直し、「この一文の根拠を聞かれたら答えられるか」を確認してみる。それだけでも、リスクは大きく下がります。
そのうえで、取り扱う商材そのものが、無理な誇張をしなくても価値が伝わるものかどうか——これも大切な視点です。説明すればするほど納得してもらえる商材と出会えれば、営業はぐっと楽になります。新しい売上の柱を探している方は、ぜひ幅広い商材を比べてみてください。
