
「この商材、扱い始めてから1年経つけれど、正直ほとんど売れていない」——そんな商材が、御社の取扱リストの中に眠っていないでしょうか。
新しい商材を増やすときには「どれを選ぶか」を真剣に検討するのに、いざ扱い始めた後の「続けるか、やめるか」は、なんとなく先送りになりがちです。契約しているから、本部の担当者に申し訳ないから、いつか売れるかもしれないから。そうやって判断を保留しているうちに、営業メンバーの時間と提案の枠だけが少しずつ削られていきます。
商材の見直しは、後ろ向きな作業ではありません。売れる商材にリソースを集中させるための、前向きな整理です。この記事では、取扱商材を見直し、続ける・やめるを判断するまでの流れを5つのステップに分けて、今日から着手できる形で解説します。
<目次>
- 取扱商材の見直しとは?進め方の全体像を先に押さえる
- ステップ1:見直しの「判断基準」を先に決める
- ステップ2:商材ごとの実績データを1枚にまとめる
- ステップ3:「売れない理由」を商材のせいにせず切り分ける
- ステップ4:継続・改善・撤退の3択で仕分ける
- ステップ5:本部と既存顧客への伝え方を段取りする
- 空いた営業リソースをどう使うかまでがセット
- 見直しでやりがちな3つの失敗
- まとめ:商材の整理は、売上をつくり直す作業
取扱商材の見直しとは?進め方の全体像を先に押さえる
取扱商材の見直しとは、自社が扱っている商材を一覧にして、それぞれ「このまま続けるか」「やり方を変えるか」「扱いをやめるか」を決める作業のことです。
いきなり個別の商材について「これは売れていないからやめよう」と話し始めると、たいてい感情論になります。担当者の思い入れ、本部との関係、過去にかけたコスト。判断材料がバラバラなまま議論すると、結局「もう少し様子を見よう」で終わってしまいます。
そうならないために、全体の流れを先に決めておきます。
- ステップ1:見直しの判断基準を先に決める
- ステップ2:商材ごとの実績データを1枚にまとめる
- ステップ3:売れない理由を切り分ける
- ステップ4:継続・改善・撤退の3択で仕分ける
- ステップ5:本部と既存顧客への伝え方を段取りする
ポイントは、基準を先に決めてから、データを見るという順番です。データを見てから基準をつくると、どうしても「残したい商材が残る基準」になってしまいます。
頻度としては、半期に一度、あるいは最低でも年に一度。上期が終わる9月や、期末前のタイミングは、ちょうど腰を据えて振り返るのに向いています。
ステップ1:見直しの「判断基準」を先に決める
最初にやるのは、「どうなっていたら続ける/やめるのか」を言葉にすることです。ここが曖昧だと、この先の作業がすべてぶれます。
基準は、次の4つの軸で考えると整理しやすくなります。
- 売上・粗利の絶対額:年間でいくらの利益を生んでいるか
- 投下時間あたりの効率:1件の成約までにかかる商談回数や工数
- 顧客との関係性への貢献:単体では儲からなくても、他商材の入口になっているか
- 将来性:市場が伸びているか、本部側の開発・支援が続いているか
そのうえで、「取扱開始から12か月経って年間粗利が◯万円未満なら見直し対象」といった具体的な数字に落とし込みます。数字は自社の規模に合わせて構いません。大切なのは、誰が見ても同じ判定になる基準にしておくことです。
あわせて、「例外を認める条件」も決めておくと揉めにくくなります。たとえば「取扱開始から6か月未満の商材は判定対象外」「大口案件が進行中のものは次回に持ち越し」といった具合です。
ステップ2:商材ごとの実績データを1枚にまとめる
基準が決まったら、判定に必要な数字を集めます。ここで完璧を目指すと止まってしまうので、まずは手元にあるデータだけで1枚の表をつくってしまうのがおすすめです。
最低限そろえたい項目は次の通りです。
- 取扱開始日
- 直近12か月の成約件数と売上・粗利
- 提案した件数(何件に提案して何件決まったか)
- 担当している営業メンバーの人数
- 本部からの支援状況(同行・研修・販促物の有無)
特に見落とされやすいのが「提案した件数」です。売れていない商材には、大きく分けて「提案はしているが決まらない」ものと「そもそも提案されていない」ものの2種類があります。この2つは打ち手がまったく違うので、必ず分けて把握してください。
数字が取れていない場合も、営業メンバーに「この半年でこの商材を何件くらい提案した?」とヒアリングするだけで、おおよその感覚はつかめます。精度より、比べられる状態にすることを優先しましょう。
ステップ3:「売れない理由」を商材のせいにせず切り分ける
データがそろったら、売れていない商材について理由を切り分けます。ここを飛ばして撤退を決めてしまうと、本当は自社側の準備不足だっただけの商材まで手放すことになりかねません。
次の順番でチェックしてみてください。
- ①提案されているか:営業メンバーが商材を思い出せていない、説明できない状態ではないか
- ②提案先が合っているか:既存顧客の業種・規模と、商材のターゲットがずれていないか
- ③提案の中身が伝わっているか:機能説明に終始し、顧客の課題と結びついていないのではないか
- ④競合・価格で負けているか:最後まで進んで失注しているなら、条件面の問題かもしれない
- ⑤そもそも需要がないか:①〜④をつぶしても動かないなら、市場側の問題の可能性が高い
①や②で止まっている商材は、まだ「商材が悪い」と判断する段階にありません。社内での共有を1回やり直すだけで動き出すこともあります。逆に、④や⑤まで進んで結果が出ていないなら、撤退の判断材料としては十分でしょう。
ステップ4:継続・改善・撤退の3択で仕分ける
ここまでの整理をもとに、商材を3つに仕分けます。「続ける」「やめる」の2択にしないことがコツです。
- 継続:基準を満たしており、今のやり方を変える必要がないもの。ここには追加の手をかけない
- 改善(期限つき):ステップ3の①〜③に原因があり、打ち手が明確なもの。「3か月後に再判定」など必ず期限を切る
- 撤退:打ち手を尽くした、あるいは自社の顧客基盤と合わないと判断できるもの
この仕分けで一番大事なのは、「改善」に入れる商材を欲張りすぎないことです。すべてに手を入れようとすると、結局どれも中途半端になります。改善枠は多くても2〜3商材にとどめ、それぞれ「誰が」「いつまでに」「何をするか」まで決めてしまいましょう。
たとえば「既存顧客50社のうち、業種が合致する12社に来月中に提案する」というレベルまで具体化できていれば、3か月後の再判定は迷わず下せます。
ステップ5:本部と既存顧客への伝え方を段取りする
撤退を決めたら、最後は伝え方の段取りです。ここを丁寧にやるかどうかで、その後の関係が変わります。
本部(商材の提供元)への連絡では、まず契約書を確認しましょう。契約期間、解約の通知時期、最低取扱条件などが定められていることがあります。そのうえで、「売れませんでした」ではなく、どんな層に何件提案し、どこで止まったのかを事実として共有するのがおすすめです。本部にとっては貴重なフィードバックであり、良い関係のまま終えられれば、別の商材で再び組む可能性も残ります。
既存顧客への対応は、すでに導入いただいている顧客がいるかどうかで変わります。いる場合は、
- サポート窓口が本部に引き継がれるのか、自社が継続対応するのか
- 契約や請求の流れがどう変わるのか
- 代替となる選択肢を提示できるか
この3点をあらかじめ整理し、本部と合意したうえで、顧客には自社から先に伝えます。後から人づてに知られるのが、いちばん信頼を損なうパターンです。
空いた営業リソースをどう使うかまでがセット
見直しの本当の目的は、商材を減らすことではなく、空いた時間と提案の枠をどこに振り向けるかにあります。ここを決めないまま整理だけすると、単に扱いが減っただけで終わってしまいます。
撤退を決めた時点で、あわせて次のことを決めておきましょう。
- 浮いた商談時間を、どの商材・どの顧客層に充てるか
- 提案の主力として伸ばす商材を、既存の中から選ぶのか、新しく探すのか
- 新たに探すなら、今回の見直しで見えた「自社に合う条件」をどう反映するか
見直しの過程では、自社の強みがはっきり見えてきます。どの業種に強いのか、どんな売り方なら回るのか、ストック型とフロー型のどちらが自社の体力に合っているのか。次の商材を選ぶときの判断基準は、まさにこの見直しの中にあります。「なんとなく良さそうだから」で増やして、また同じことを繰り返さないためにも、条件を言語化してから探し始めてください。
見直しでやりがちな3つの失敗
最後に、実際によく見かけるつまずきを挙げておきます。
①「もったいない」で判断してしまう
研修に参加した、販促物を作った、初期費用を払った。すでに使ったコストは、今後の判断とは切り離して考える必要があります。過去の投資を理由に続けると、損失が積み上がっていきます。
②担当者の熱意だけで残す
思い入れのある担当者がいると議論が止まりがちです。熱意は貴重ですが、それなら「改善」枠に入れて期限を切るのが健全な落としどころです。期限内に結果が出なければ、そのときは納得して手放せます。
③一度整理して終わりにする
商材の構成は、市場や自社の状況とともに変わります。半年ごとに同じ表を更新する運用にしておけば、次回からの作業はぐっと軽くなります。1回目の表づくりは大変ですが、2回目以降は数字を入れ替えるだけです。
まとめ:商材の整理は、売上をつくり直す作業
取扱商材の見直しは、「やめること」を決める作業のように見えて、実際には「どこに力を注ぐか」を決める作業です。
あらためて、進め方を振り返っておきましょう。
- 判断基準を先に決めてから、データを見る
- 売れていない理由を「提案されていない」「決まらない」に切り分ける
- 継続・改善・撤退の3択で仕分け、改善には必ず期限をつける
- 本部にも顧客にも、事実をもとに自社から先に伝える
- 空いたリソースの使い道まで決めて、はじめて見直しが完了する
整理を終えると、次に扱うべき商材の条件がかなりはっきり見えているはずです。自社の顧客層に合い、既存の営業活動の流れに無理なく乗せられる商材。その条件を持って探せば、選び方の精度は前回とは比べものになりません。
上期の締めくくりや期末前のこの時期は、商材構成を見直す絶好のタイミングです。まずは取扱商材の一覧をつくるところから、始めてみてはいかがでしょうか。
