
「今月の売上、着地はどのくらいになりそうですか?」と聞かれて、はっきり答えられずに言葉に詰まった経験はないでしょうか。商談はたくさん抱えているはずなのに、月末になってみると目標に届かない。あるいは、思ったよりうまくいったものの、なぜ達成できたのか自分でも説明できない。営業責任者や経営者の方から、こうしたお悩みを伺うことは少なくありません。
こうした「読めない状態」を減らす考え方が、売上予測(セールスフォーキャスト)です。10月は下期の折り返しにあたり、年末や来期に向けた計画を見直すのにちょうど良い時期でもあります。新しい商材の取り扱いを検討している企業にとっても、現状の売上の見通しを把握しておくことは、どの商材を足すべきかを判断する土台になります。
この記事では、売上予測の基本から、今日から始められる作り方、精度を上げるコツまでを、できるだけ専門用語を使わずに解説します。
<目次>
- 売上予測(セールスフォーキャスト)とは?見込みを数字で見える化する考え方
- 売上予測が必要な理由|外れること自体より「読めない」ことが問題
- 今日から作れる売上予測の基本の考え方
- 売上予測を作る5ステップ
- 予測が外れやすい4つのパターンと対策
- 売上予測を新しい取扱商材選びに活かす
- まとめ|まずは「今ある商談」の棚卸しから始めましょう
売上予測(セールスフォーキャスト)とは?見込みを数字で見える化する考え方
売上予測とは、現在抱えている商談や既存顧客の継続分をもとに、「今月・今四半期にどのくらいの売上になりそうか」をあらかじめ見積もることです。英語ではセールスフォーキャストと呼ばれます。
ここで大切なのは、願望や目標を書くことではなく、根拠のある見込みを数字にすることです。目標が「こうなりたい数字」だとすれば、予測は「今の状況なら、こうなりそうな数字」です。この2つの差が見えると、足りない分をどう埋めるかを具体的に考えられるようになります。
難しい統計の知識は必要ありません。表計算ソフトが1つあれば、十分に始められます。
売上予測が必要な理由|外れること自体より「読めない」ことが問題
「予測しても、どうせ外れるのでは」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。確かに、予測がぴったり当たることはまれです。しかし、予測の目的は的中させることではなく、手を打つための時間を確保することにあります。
売上予測があると、たとえば次のようなメリットがあります。
- 目標との差が早い段階で分かり、月末に慌てず追加の施策を打てる
- 仕入れや人員配置、広告費などの判断を、勘ではなく数字で行える
- 商談が少ない月を事前に把握でき、新規開拓や新しい商材の検討を前倒しできる
つまり、売上予測は「結果を当てるゲーム」ではなく、「先に気づくための仕組み」だと考えると取り組みやすくなります。
今日から作れる売上予測の基本の考え方
最も基本的な計算は、商談ごとの金額に「受注できる確率」を掛け合わせる方法です。たとえば、100万円の商談で受注確率が30%なら、予測値は30万円です。これをすべての商談で足し上げたものが、おおよその見込みになります。
受注確率は、商談の進み具合(段階)ごとにあらかじめ決めておくと、人によるばらつきを抑えられます。目安としては、次のような分け方が一般的です。
- 初回面談を終えた段階:10%前後
- 提案書や見積書を提出した段階:30%前後
- 決裁者を交えて条件を詰めている段階:60%前後
- 契約書の確認・押印待ちの段階:90%前後
この数字はあくまで例です。自社の過去の実績から、「見積提出後に実際に受注できた割合」を出してみると、より実態に近い確率に調整できます。
売上予測を作る5ステップ
では、実際にどう進めればよいのでしょうか。次の5つのステップがおすすめです。
ステップ1:商談を一覧にする。会社名、商材、金額、現在の段階、次の行動予定を1行ずつ書き出します。ここで担当者の頭の中にある商談を洗い出すだけでも、新たな気づきがあるものです。
ステップ2:段階を決める。前の章のように、商談の進み具合を3〜5段階に分け、それぞれの受注確率を仮置きします。
ステップ3:受注時期を入れる。「いつ売上になるか」を月単位で記入します。受注の時期と売上計上の時期が異なる商材は、分けて書いておくと後で迷いません。
ステップ4:継続収入を加える。月額課金や定期的な買い替えなど、すでに見込める継続分を別枠で足します。ストック型の収入が多いほど、予測は安定しやすくなります。
ステップ5:毎週見直す。最低でも週に1回、段階の変化や新しい商談を反映します。作りっぱなしにせず、更新し続けることが最も重要です。
予測が外れやすい4つのパターンと対策
売上予測が思うように機能しない場合、多くは次のいずれかが原因です。
- 楽観的な見積もり:担当者の期待が確率に反映されてしまう。対策は、段階ごとの確率をルール化し、個人の感覚で変えないこと。
- 商談の放置:動いていない商談が一覧に残り続ける。対策は、一定期間やり取りがない商談を「休眠」として別管理すること。
- 大型商談への依存:1件の結果で全体が大きく動いてしまう。対策は、大型案件は別枠で見て、通常の予測と分けて考えること。
- 入力の遅れ:情報の更新が後回しになる。対策は、週次の会議で必ず一覧を見る時間を設けること。
どれも特別な技術は不要で、運用のルールを決めることで改善できるものばかりです。
売上予測を新しい取扱商材選びに活かす
売上予測は、既存の営業を管理するだけでなく、新しい商材を探すきっかけとしても役立ちます。予測を作ってみると、次のような課題が見えてくることがあるからです。
たとえば、数か月先の商談が極端に少ないと分かれば、新規の販路や商材を前倒しで検討する必要があります。また、売上が単発の案件に偏っているなら、継続的な収入が見込めるストック型の商材を加えることで、予測の安定感が増します。
代理店として商材を取り扱う場合も同じです。「今の営業体制で、どのくらいの売上が見込めるか」が分かっていれば、新しい商材に割ける時間や、見込める上乗せ分を現実的に試算でき、無理のない判断につながります。
まとめ|まずは「今ある商談」の棚卸しから始めましょう
売上予測は、当てるためのものではなく、先に気づいて手を打つための仕組みです。最初から完璧なものを目指す必要はありません。
- 商談を一覧にして、段階ごとに受注確率を決める
- 受注時期と継続収入を加えて、月ごとの見込みを出す
- 週に1回見直して、ずれの原因を振り返る
- 見えてきた不足分を、新しい商材や販路で補う
下期の折り返しの今こそ、手元の商談を棚卸しするのに良いタイミングです。まずは今週中に、今ある商談を1枚の表にまとめるところから始めてみてはいかがでしょうか。見通しが立てば、年末に向けて、そして来期に向けて、より落ち着いて次の一手を選べるようになるはずです。
