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電子帳簿保存法とは?代理店・営業会社が対応すべき電子取引データ保存のルールと請求書・契約書の管理方法をわかりやすく解説

投稿日:2026年9月16日 更新日:2026年9月15日

新しい商材を取り扱いはじめたり、代理店として販売パートナー契約を結んだりすると、それまで以上に「書類のやりとり」が増えていきます。メーカーから送られてくる契約書、毎月の手数料の支払通知、顧客に発行した請求書の控え、クラウド上でダウンロードした納品書。気がつけば、紙とデータが入り混じった状態になっていた——そんな会社は決して少なくありません。

そしてある日、「これ、電子帳簿保存法的に大丈夫なんでしたっけ?」と経理担当者から声をかけられて、はじめて手が止まる。言葉は聞いたことがあるけれど、自社が何をどこまでやるべきなのかまでは分かっていない。そんな状態のまま過ごしている方も多いのではないでしょうか。

電子帳簿保存法は、決して経理部門だけの話ではありません。営業の現場でメールに添付されて届く請求書も、クラウドサービスから落としてきた明細も、すべて対象になり得ます。この記事では、代理店ビジネスや営業会社の目線で、電子帳簿保存法の基本と「最低限やるべきこと」を整理してお伝えします。

この記事を書いた人
佐藤 康人
一般社団法人日本代理店協会 会長
株式会社プライスレス 代表取締役 佐藤 康人

代理店構築支援を専門とする株式会社プライスレスの代表として、これまで3,000社以上の代理店展開をサポート。その他、一般社団法人日本代理店協会の会長として、代理店ビジネスの普及・発展にも力を注ぐ。
「代理店募集で日本を元気に!」をスローガンに、代理店本部側、代理店側の成功を支援している。

<目次>

  1. 電子帳簿保存法とは?3つの保存区分をまず押さえる
  2. なぜ代理店・営業会社こそ意識しておきたいのか
  3. 義務なのは「電子取引データ保存」だけ。対象になる書類とは
  4. 保存の2大要件「真実性の確保」と「可視性の確保」
  5. 検索要件と猶予措置——小さな会社ほど負担は軽くできる
  6. 代理店ビジネスでつまずきやすい3つのポイント
  7. 今日からできる対応ステップ
  8. まとめ:書類の土台が整うと、新しい商材に踏み出しやすくなる

電子帳簿保存法とは?3つの保存区分をまず押さえる

電子帳簿保存法(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)とは、帳簿や請求書といった国税に関する書類を、紙ではなく電子データで保存するためのルールを定めた法律です。

名前だけを聞くと「帳簿をデータ化するための法律」と思いがちですが、実際には少し違います。この法律は大きく3つの区分に分かれており、それぞれ性格がまったく異なります。

  • ①電子帳簿等保存……会計ソフトなどで自社が最初から電子的に作成した帳簿・書類を、データのまま保存する区分。これは任意です。
  • ②スキャナ保存……紙で受け取った領収書や請求書をスキャンして、データで保存する区分。これも任意です。
  • ③電子取引データ保存……メールやWeb上でデータとしてやりとりした取引情報を、データのまま保存する区分。こちらだけがすべての事業者に義務づけられています。

つまり「電子帳簿保存法への対応」と一口に言っても、①と②は「やってもいいですよ」という制度で、義務があるのは③だけ。ここを取り違えて、社内の紙をすべてスキャンしなければならないと思い込んでしまうケースがよくあります。まずは、やらなければならないのは③の電子取引データ保存であるという一点を押さえてください。

なぜ代理店・営業会社こそ意識しておきたいのか

「うちは小さい会社だから関係ないのでは」と感じる方もいるかもしれません。しかし電子取引データ保存の義務には、会社の規模による例外がありません。法人でも個人事業主でも、電子で取引データをやりとりしていれば対象になります。

そして代理店ビジネスや営業代行の現場は、実は電子取引の割合がとても高いという特徴があります。

  • メーカー・商材元から、契約書や覚書がPDFでメール添付されてくる
  • 毎月の代理店手数料の支払明細が、パートナー向け管理画面からダウンロードできる
  • 顧客への見積書・請求書を、クラウド請求ソフトからメールで送信している
  • クラウドサインなどの電子契約サービスで、申込書を締結している
  • 広告費や交通費を、Web明細やアプリ上の領収書で受け取っている

いずれも立派な「電子取引」です。しかも、これらのデータは経理部門を経由せず、営業担当者のメールボックスや個人フォルダにそのまま溜まっていきがちです。電子帳簿保存法が営業の話でもあるというのは、こういう意味です。

新しい商材を増やせば、その分だけ取引先も増え、やりとりされるデータも増えます。扱う商材が2社、3社と増えたあとで整理しようとすると、かなり骨が折れます。だからこそ、体制が小さいうちにルールを決めておくほうが結果的にラクなのです。

義務なのは「電子取引データ保存」だけ。対象になる書類とは

では、具体的に何が「電子取引」にあたるのでしょうか。判断の軸はシンプルで、取引に関する情報を、紙を介さずデータでやりとりしたかどうかです。

対象になりやすいのは、次のような書類です。

  • 注文書・契約書・申込書
  • 見積書・納品書・請求書・領収書
  • 支払通知書・手数料明細
  • 値引きや返品に関する通知書

これらを、メール添付・Webサイトからのダウンロード・EDI・クラウドサービス経由などで授受した場合、そのデータのまま保存する必要があります。ここで最も間違えやすいのが、「印刷して紙のファイルに綴じておけばよい」という対応です。かつては認められていましたが、現在は原則として、電子でやりとりしたものは電子のまま残すことが求められます。

逆に、はじめから紙で受け取った請求書を紙のまま保管する分には、これまでどおりで問題ありません。スキャンしてデータ化するかどうかは、あくまで任意です。

保存の2大要件「真実性の確保」と「可視性の確保」

データで保存するといっても、ただフォルダに入れておけばよいわけではありません。大きく2つの要件を満たす必要があります。

1つ目は「真実性の確保」。あとから都合よく金額を書き換えられないようにするための要件です。次のいずれかを満たせばよい、という形になっています。

  • タイムスタンプが付与されたデータを受け取る
  • 受け取ったデータに、速やかにタイムスタンプを付与する
  • 訂正・削除の履歴が残る、または訂正・削除ができないシステムで保存する
  • 訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用する

このうち、システム投資をせずに対応できるのが最後の「事務処理規程」です。国税庁がサンプルとなる規程のひな形を公開しており、それを自社の実態に合わせて整えれば足ります。費用をかけずに始めたい会社にとっては、現実的な選択肢と言えるでしょう。

2つ目は「可視性の確保」。税務調査などの際に、必要なデータをすぐ取り出して見られる状態にしておく、という要件です。パソコンやディスプレイ、プリンタ、操作マニュアルを備えておくこと、そして後述する検索機能を確保することが求められます。

検索要件と猶予措置——小さな会社ほど負担は軽くできる

可視性の確保のなかで、多くの会社がつまずくのが検索要件です。原則としては、①取引年月日 ②取引金額 ③取引先の3項目で検索できるようにしておく必要があります。

とはいえ、専用システムがなくても対応は可能です。よく使われるのが、ファイル名にルールを持たせる方法です。

  • 例:20260915_110000_〇〇商事株式会社.pdf(日付_金額_取引先)

このルールで保存しておけば、フォルダの検索窓から3項目で探せる状態になります。あわせて、取引先ごとの索引をExcelで一覧にしておくやり方も一般的です。

さらに、一定規模以下の事業者については検索要件が緩和される取扱いがあります。判定期間の売上高が基準以下である場合や、求めに応じてデータのダウンロードに応じられる場合には、検索機能そのものが不要とされるケースがあります。

加えて、システム対応が間に合わないなど相当の理由があると認められ、かつ求めに応じてデータのダウンロードと出力書面の提示ができる場合には、一部の要件が猶予される取扱いも設けられています。ただしこれは「対応しなくてよい」という意味ではなく、あくまで例外的な救済措置です。自社がどの取扱いに該当するかは、売上規模や体制によって変わるため、顧問税理士や国税庁の最新の資料で必ず確認してください。

代理店ビジネスでつまずきやすい3つのポイント

実際にご相談をいただくなかで、代理店・営業会社に共通して起きやすいつまずきが3つあります。

①メール添付の請求書が、営業担当者の受信箱に眠っている
商材元からの支払明細や契約書が、担当者個人のメールに届いたまま経理に渡っていない、というパターンです。担当者が退職すると、そのデータごと行方不明になりかねません。受領したら決められた共有フォルダに置く、という一本のルールを決めるだけで大きく改善します。

②パートナー管理画面の明細をダウンロードしていない
「管理画面にログインすればいつでも見られる」と考えて保存していないケースです。しかしサービス側の保存期間には限りがあり、契約を解除すれば見られなくなります。毎月ダウンロードして自社側に残す運用にしておきましょう。

③印刷して紙で保管し、データを削除してしまっている
最も多い誤解です。紙に出すこと自体は構いませんが、元のデータを消してしまうと要件を満たせません。紙は紙で使いつつ、データは必ず残す、という二段構えにしてください。

今日からできる対応ステップ

難しく考えすぎる必要はありません。次の順番で進めれば、多くの会社は無理なく整えられます。

  • ステップ1:電子で受け取っている書類を洗い出す……メール添付、Web明細、電子契約、クラウド請求など、経路ごとにリスト化します。
  • ステップ2:保存場所を1か所に決める……クラウドストレージでも社内サーバーでも構いません。「ここに入れる」という置き場所を統一します。
  • ステップ3:ファイル名のルールを決める……日付_金額_取引先の形に揃え、検索できる状態をつくります。
  • ステップ4:事務処理規程を整備する……国税庁のひな形をもとに、自社版を作成して運用を始めます。
  • ステップ5:営業メンバーに共有する……経理だけで完結しない話なので、受領した人がその場で保存する流れを周知します。

特に効果が大きいのはステップ5です。データを最初に受け取るのは、多くの場合は営業担当者だからです。ルールを決めても現場に届いていなければ、抜け漏れはなくなりません。

まとめ:書類の土台が整うと、新しい商材に踏み出しやすくなる

電子帳簿保存法について、押さえておきたい点を振り返ります。

  • 3つの区分のうち、義務なのは電子取引データ保存だけ
  • メール添付やWebダウンロードで受け取った請求書・契約書はデータのまま保存する
  • 要件は真実性の確保と可視性の確保の2つ
  • 事務処理規程+ファイル名ルールなら、費用をかけずに始められる
  • 規模や事情に応じた緩和・猶予の取扱いがあるため、自社の該当状況は税理士・国税庁の最新情報で確認する

こうした事務まわりの整備は、正直なところ売上に直結するものではありません。それでも取り組む価値があるのは、取引が増えたときに慌てずに済む土台になるからです。

新しい商材を1つ増やせば、新しい契約書が増え、新しい支払明細が増えます。2つ、3つと扱う商材が増えていけば、その分だけ管理すべきデータも積み上がっていきます。逆に言えば、いま仕組みを整えておけば、「管理が大変になりそうだから」という理由で商材を増やすことをためらわずに済むということでもあります。

販路を広げ、売上の柱を増やしていくうえで、足元の書類管理は地味ですが確かな支えになります。この機会に、自社の受け取り方と保存の流れを一度見直してみてはいかがでしょうか。

※本記事は一般的な情報の提供を目的としたものです。具体的な対応にあたっては、国税庁の最新の公表資料をご確認のうえ、顧問税理士等の専門家にご相談ください。

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