
新しい商材の取り扱いを始めたものの、「営業担当によって説明の内容がバラバラで、成果に大きな差が出てしまう」という悩みを抱えていませんか。
ベテランは自分の言葉で伝えられる一方、経験の浅いメンバーは何をどの順番で話せばよいのか分からない。結果として、せっかく良い商材を仕入れたのに、受注できる人とできない人がはっきり分かれてしまう。これは多くの会社で起きている、とてももったいない状況です。
その差を埋めてくれるのが営業トークスクリプトです。スクリプトというと「棒読みの台本」というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、実際は違います。うまく作られたスクリプトは、話す内容を縛るものではなく、誰が話しても最低限の質を担保するための「型」です。この記事では、新しい商材を扱い始めた会社が今日から取りかかれる、営業トークスクリプトの作り方を5つのステップに分けて解説します。
<目次>
- 営業トークスクリプトの作り方は?まず全体像を押さえる
- ステップ1:ターゲットと「刺さる悩み」を1つに絞る
- ステップ2:商材の強みを「お客様の言葉」に翻訳する
- ステップ3:会話の流れを5つのパートに分けて骨組みを作る
- ステップ4:断り文句への切り返しをあらかじめ用意する
- ステップ5:声に出して読み、ロールプレイングで整える
- 作ったスクリプトを「使えるもの」に育てる改善のコツ
- よくある失敗と、その回避のポイント
- 新しい商材ほど、スクリプトの効果は大きい
- まとめ
営業トークスクリプトの作り方は?まず全体像を押さえる
作り方の細部に入る前に、全体の流れを先に確認しておきましょう。営業トークスクリプトづくりは、大きく次の5つのステップで進みます。
- ステップ1:誰に、どんな悩みに向けて話すのかを決める
- ステップ2:商材の特徴を、お客様にとっての価値に言い換える
- ステップ3:会話の流れをパートに分けて骨組みを作る
- ステップ4:断られたときの切り返しを準備する
- ステップ5:声に出して読み、ロールプレイングで整える
ポイントは、いきなり文章を書き始めないことです。多くの方がステップ3の「セリフを書く」ところから手をつけてしまいますが、誰に何を伝えるかが決まっていない状態で書いた文章は、どうしても商品説明の羅列になってしまいます。
また、最初から完璧を目指す必要もありません。スクリプトは一度作って終わりではなく、現場で使いながら磨いていくものです。まずは「7割の完成度でいいので、来週から使える形にする」くらいの気持ちで取りかかるのがおすすめです。
ステップ1:ターゲットと「刺さる悩み」を1つに絞る
最初にやるべきは、話す相手を具体的に決めることです。「中小企業の経営者」では広すぎます。「従業員10〜30名の建設会社で、事務作業に追われている社長」くらいまで絞り込みましょう。
相手が決まったら、次はその人が抱えている悩みを書き出します。ここでのコツは、悩みを1つに絞ることです。商材にはたいてい複数のメリットがありますが、それを全部並べると、聞いている側はどれも自分事に感じられません。
絞り込むときは、次の観点で選んでみてください。
- そのお客様が今すぐ困っていることか(緊急性)
- 放っておくと損失が大きくなることか(重要性)
- 自社の商材がはっきり解決できることか(適合性)
3つすべてに当てはまる悩みが見つかれば、それがスクリプトの中心テーマになります。既存のお客様や、過去に成約した案件を振り返ると、ヒントが見つかりやすいのではないでしょうか。
ステップ2:商材の強みを「お客様の言葉」に翻訳する
次に、商材の特徴をお客様にとっての価値に言い換えていきます。ここでよく使われるのが「特徴→利点→価値」という3段階の翻訳です。
たとえば業務システムであれば、次のように整理できます。
- 特徴:スマートフォンから日報を入力できる
- 利点:現場から直接入力できるので、事務所に戻る必要がない
- 価値:1人あたり月10時間の残業が減り、人件費を抑えられる
お客様が聞きたいのは3つめの「価値」です。ところが営業資料の多くは1つめの「特徴」で止まっています。この翻訳作業を、主要な機能ごとに3〜5個ぶん書き出しておくと、スクリプトの中身が一気に厚くなります。
このとき、できるだけ数字を入れることを意識してください。「効率化できます」より「月10時間削減できます」のほうが、相手の頭の中に具体的な絵が浮かびます。まだ実績がなければ、メーカーや代理店本部が持っている導入事例の数字を聞いてみるとよいでしょう。
ステップ3:会話の流れを5つのパートに分けて骨組みを作る
ここでようやく、スクリプトの形にしていきます。おすすめは、会話を次の5つのパートに分けて組み立てる方法です。
- ①つかみ(10〜20秒):自己紹介と、なぜ連絡したのかを短く伝える
- ②ヒアリング:ステップ1で決めた悩みについて、相手の現状を質問する
- ③提案:ステップ2で用意した「価値」を、相手の答えに合わせて伝える
- ④懸念の解消:料金・導入負荷・実績など、気になる点に先回りして答える
- ⑤クロージング:次のアクション(資料送付・訪問日程など)を具体的に提案する
それぞれのパートに、実際のセリフを書き込んでいきます。ここで大事なのが、②のヒアリングにいちばん時間をかけることです。一方的に説明されるより、質問されて自分で話したほうが、人は納得感を持ちます。
ヒアリングの質問は、はい・いいえで終わらないものを3〜5個用意しておきましょう。「今、日報の集計にはどれくらいお時間をかけていますか」「その作業でいちばん手間だと感じるのはどの部分でしょうか」といった具合です。
なお、③の提案は1パターンではなく2〜3パターン用意しておくと便利です。相手の答えによって、刺さるポイントは変わるからです。
ステップ4:断り文句への切り返しをあらかじめ用意する
営業の現場で必ず出てくるのが、「今は必要ない」「予算がない」「他社と契約している」といった断り文句です。これらはほぼパターンが決まっているので、事前に切り返しを用意しておけば、その場で慌てずに済みます。
まずは、過去に言われた断り文句を思い出せる限り書き出してみてください。おそらく5〜7個程度に収まるはずです。そのうえで、それぞれに対する返し方を考えます。
切り返しを考えるときのコツは、いきなり反論しないことです。「そうなんですね」といったん受け止めてから、質問で状況を掘り下げる。この順番を守るだけで、相手の警戒心はぐっと下がります。
- 「今は必要ない」→「差し支えなければ、どのタイミングでしたらご検討いただけそうでしょうか」
- 「予算がない」→「今かかっているコストと比べて、どのくらいであれば現実的でしょうか」
- 「他社と契約している」→「今のサービスで、ここは改善したいと感じている点はありますか」
大切なのは、切り返しの目的がその場でひっくり返すことではないという点です。次につながる情報を1つでも引き出せれば、その商談は成功と考えてよいでしょう。
ステップ5:声に出して読み、ロールプレイングで整える
ここまでできたら、必ず声に出して読んでみてください。書き言葉のまま読むと、驚くほど不自然に聞こえるものです。「〜における」「〜を実現いたします」といった硬い表現は、話し言葉に直していきます。
次に、社内でロールプレイングをおこないます。1人が営業役、もう1人がお客様役になり、実際の商談と同じ流れで通してみましょう。このとき、お客様役の人にはあえて厳しい反応をしてもらうのがポイントです。
ロールプレイングでは、次の点をチェックします。
- つかみの部分が長すぎないか(20秒以内に収まっているか)
- ヒアリングの質問に、相手が答えやすいか
- 専門用語をそのまま使っていないか
- 次のアクションが具体的に提案できているか
1回で完成させようとせず、2〜3回まわして直していくと、実戦で使える形に近づいていきます。
作ったスクリプトを「使えるもの」に育てる改善のコツ
スクリプトは、作った時点ではまだ半分の完成度です。現場で使いながら改善していくことで、本当に成果につながるものになります。
改善を回すために、次の3つを習慣にしてみてください。
- うまくいった言い回しを共有する:週1回でよいので、営業メンバーが「この表現が効いた」と感じた言葉を持ち寄る場を作る
- 詰まった箇所を記録する:どのパートで会話が止まったのかをメモしておくと、修正すべき場所が見えてくる
- 月に1度は更新する:更新の担当者と日付を決めておかないと、スクリプトは放置されがちです
また、スクリプトは1つに固定しないほうがうまくいきます。テレアポ用、初回訪問用、既存客への追加提案用と、場面ごとに分けておくと使いやすくなります。最初から全部そろえる必要はないので、いちばん商談数の多い場面から作っていきましょう。
よくある失敗と、その回避のポイント
スクリプトづくりでつまずきやすいポイントも押さえておきましょう。
- 完璧を目指して完成しない:細部にこだわりすぎて、いつまでも現場に出てこないパターンです。7割で運用を始め、使いながら直しましょう
- 説明が長すぎる:商材への思い入れが強いほど、説明が長くなります。提案パートは2分以内を目安にしてください
- 読み上げるだけになる:スクリプトは会話の地図であって、原稿ではありません。流れさえ頭に入っていれば、言葉は各自のものでかまいません
- ベテランが使わない:作っても一部の人しか使わないケースはよくあります。ベテランの成功トークをスクリプトに取り込む形にすると、自分事として関わってもらいやすくなります
新しい商材ほど、スクリプトの効果は大きい
すでに何年も扱っている商材であれば、社内に暗黙の「話し方」が蓄積されています。一方で、新しく取り扱いを始めた商材には、それがありません。
だからこそ、新商材の立ち上げ時こそスクリプトを作るタイミングだと言えます。取り扱い開始から3か月ほどの間に型を作れるかどうかで、その商材が売上の柱になるか、いつの間にか扱わなくなるかが分かれます。
なお、代理店として商材を扱う場合は、まず本部が用意しているスクリプトや営業資料を確認するところから始めるのが近道です。本部側にはすでに多くの商談データが蓄積されているため、ゼロから作るより早く、精度の高いものができあがります。そのうえで、自社の顧客層に合わせて手を入れていくとよいでしょう。
商材選びの段階であれば、営業ツールやスクリプトの提供があるかどうかを判断材料の1つに加えてみてください。立ち上がりのスピードが大きく変わってきます。
まとめ
営業トークスクリプトの作り方を、5つのステップで見てきました。最後にもう一度振り返っておきましょう。
- ターゲットと悩みを1つに絞る
- 商材の特徴を「価値」に翻訳する
- 会話を5パートに分けて骨組みを作る
- 断り文句への切り返しを用意する
- 声に出して読み、ロールプレイングで整える
そして何より大切なのが、作って終わりにせず、現場の声を反映して更新し続けることです。まずは今週、いちばん商談数の多い場面のスクリプトを1本作ってみてはいかがでしょうか。
営業の型が整えば、扱える商材の幅も自然と広がっていきます。新しい売上の柱を探している方は、あわせて取扱商材の検討も進めてみてください。
